Uzbekistan

三歳だより

 2019     Aug 28, 2019

ウズベキスタンの西部にある町、ヒヴァ。この町での過ごし方は決まっている。
午前中は一番のお気に入りの女の子の家に行って、そこの家や近所の子供らと過ごす。天気が悪い日は家の中に入ることもあるが、ほとんどは軒先にある階段のところに座っている。午後はまた違う家へ行くこともあるが、同じように過ごすもこともある。
これといった観光はしない。観光はしないが、子供らと近所を散歩するのが日課のようになっている。彼女らはイチャン・カラという世界遺産に登録されている旧市街に住んでおり、そこには50以上の歴史的建造物があるので、あらたまって観光しなくてもいいのだ。

とある日、いつものように朝訪ねて行くと年上の子達はみんな学校へ行っているようで、いたのは三歳児だけ。いつものように散歩に行こうと言う。言葉の通じない三歳児とふたりきりで散歩というのは、いささか不安ではあるものの、この子は私の膝の上が定位置なくらいに慣れているし、トイレも自分で行くことができるようなので、大丈夫だろうと出かけることにした。
折り返し地点でソフトクリームを買って木陰にふたり並んで座って食べていたところ、周りの誰かが騒ぎ出し、最近できたツーリストポリスを呼んだ。ああ、面倒くさいことになった、この国で旅行者の一番の敵は警察官なのだ。
警察官がやってきたものの、英語が話せないのか私には質問してこない。周りの人に状況を確認し、三歳児にばかり質問する。ウズベク語なので何を会話しているかはわからないが、三歳児がソフトクリームをなめる合間に答えている単語から察するに、名前や住所、私のことなんかを聞かれているようだ。いろんな質問をされているいるが、私のことはさっきからずっと名前しか答えてない。それしか知らないんだろう。年上の子がいたら日本人だとか、泊まっているホテルだとか、何年も前から知っている関係だとか、答えれたんだろうがしかたがない。だらだらと溶け出したソフトクリームでベトベトになってきた三歳児の口や手をウエットティッシュでふきながら、がんばるんだと心の中で応援するしかない。
このあとどうなるのだろうか、不安でいっぱいのなか、三歳児がソフトクリームを食べきったところでさっさと帰ろうとすると、警察官が「この子は警察署に連れて行く」と英語で言ってきた。英語喋れたんかい。
警察署に連れてったところで何も変わらんだろうと、とりあえず拒否して背を向けて歩き出してみる。内心はドキドキである。家まで付いて来てくれればなんとかなるし、というかそれしかないように思う。
すぐさま警察官が追いかけてくると思ったが、少しして周りにいたお土産屋さんの女性が付いて来た。どうやら、この人が家まで見届けることで警察官を説得してくれたようだ。
三歳児の足でも片道10分くらいの道のりの散歩なのだが、どっと疲れた散歩になった。