India

三匹目のこぶた

ラダックの冬は長く厳しい、一年の半分以上が氷点下だという。氷点下20度以下になることも珍しくなく、外界との間をつなぐ峠道は積雪により通行不能になり閉ざされた世界となる。あらゆるものが凍りつき、物資は日ごとに乏しくなってゆくので、9月には早くも冬支度が始まる。
野菜や果実などを天日干しにしたり、保存食を作ったり、燃料にする牛糞や家畜用の干草を備蓄する。また夜が明ける前から畑仕事に出掛けていく、そんな光景を多く見かけた。収穫の時期でもあるので、大変忙しいのだ。
ラダックの人達は働きものだ。もちろんラダックといっても広いので、土地によって程度は異なるが、小さな村だと働きもの具合いというのがすぐ分かる。雨がほとんど降らない地域のラダックは木材に乏しく、家は石材で作られる。また家や畑は胸ほどの高さの石塀に囲まれ、水路も石材で作られる。新しい家は岩から砂を作りコンクリートや日干しレンガにしたもので作られるが、昔ながらの家は岩から切り出した石や、落ちてそうな石をそのまま積み上げて作られている。
コンクリートで家を作るのは分かる。日干しレンガもまあ分かる。家を作るポピュラーな方法だし、他でもよく見かけるものだ。それでも大変な作業だ。車の入れない村では、頭にかけた布で二つ三つほどのレンガをこつこつ運んで作っている。完全に三匹のこぶたの三匹目である。切り出した石や落ちてそうな石を積み上げて作っているのに関しては、もはや理解不能だ。自分が同じ環境にいたら、同じようにするだろうか。一匹目のこぶたの家くらいしか作れそうな気がしない。
積み上げられて作られた家や塀を見るのは面白く、よく足を止めては眺めていた。不思議と積み上げられている石は崩れそうな感じがしない。それほど綿密に作られている。見ていてめちゃくちゃ面白いわけではないが、かといってつまらないわけでもなく、程よい面白さがある。
石で作られた家や石積みの塀が小道を作り、村の中はまるで迷路のようになっている。木陰になった小道は味わいがあっていい感じだ。ゴミも落ちていない。インドの外界と大きく違う。美しく作られた村ほど、子供がよく子守りや食器洗いなどのお手伝いしていたのは偶然ではないだろう。働きものの村は色々と美しいのだ。