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Nepal2018

#127

大晦日の闇

Jun 18, 2019

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「ほら見て見て」、そう言いながら指差す先にいたのは、ひとりの少年と警察官。
この日は大晦日。ポカラの街は、とてもにぎわっていた。ネパールでは、正月は四月にあるので、大晦日では何もしないのが一般的なのだが、第二都市のポカラだけは違っていて、毎年ニューイヤーフェスティバルが開催されていて盛り上がるのである。
メインストリートが歩行者天国となり、たくさんの露店や屋台でにぎわう。道沿いのレストランやホテルだけではなく、普段は飲食関係とまったく異なる商売をしている店も、ローカル向けの屋台を出したりする。そんなひとつの、普段は小さな携帯ショップを営んでいる店が出している屋台で、そこの主人とビールで乾杯していたときのことだった。その主人とは、そこの娘がまだ赤ん坊のころから写真を撮り続けているので、すっかり親しい仲なのである。
彼が指差した先にいた少年は、知っている子だった。携帯ショップの隣の商店の子だ。年齢は携帯ショップの娘より少し幼く、まだ4歳くらい。よく見かけるが、なんとなく好きじゃないので、知っているのはその程度だけ。
少年はどうやら警察官に露店で売られているおもちゃをねだっているようだった。こういうことはネパールではよくある光景、とまではいかないものの、そこまで珍しいことでもない。しかし、衝撃だったのはその先だ。少年は買ってもらったおもちゃを持ち帰って、母親に渡す。母親はそれを売っていた露店へ持って行き、お金と交換したのだ。ここまでがワンセットだったのである。
携帯ショップの主人があらかじめわかっていたっていうことは、もちろんはじめてではないんだろう。警察官にばれなければ、誰も傷つかないことといえばそうかもしれないが、やっぱり好きじゃないな。少年のことがなんとなく好きじゃなかった理由が、はっきりした大晦日の夜だった。

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