India

三匹目のこぶた

 2016     Feb 13, 2017

ラダックの冬は長く厳しい、一年の半分以上が氷点下だという。氷点下20度以下になることも珍しくなく、外界との間をつなぐ峠道は、積雪により通行不能になり閉ざされた世界となる。あらゆるものが凍りつき、物資は日ごとに乏しくなってゆくので、9月には早くも冬支度が始まる。
野菜や果実などを天日干しにしたり、保存食をつくる。燃料にする牛糞や、家畜用の干草を備蓄する。収穫の時期でもあるのでたいへん忙しいので、まだ夜が明ける前から畑仕事に出掛けていく。そんな光景を多く見かけた。
ラダックの人たちは働きものだ。もちろんラダックといっても広いので、土地によって程度は異なるが、小さな村だと働きもの具合いがすぐわかる。雨がほとんど降らない地域のラダックは木材に乏しく、家は石材で作られる。また家や畑は、胸ほどの高さの石塀に囲まれ、水路も石材で作られる。新しい家は岩から砂を作り、コンクリートや日干しレンガにしたもので作られるが、昔ながらの家は岩から切り出した石や、落ちてそうな石をそのまま積み上げて作られている。
コンクリートで家をつくるのはわかる。日干しレンガも、まあ、わかる。家をつくるポピュラーな方法だし、ほかでもよく見かける。それでもたいへんな作業だ。車の入れない村では、頭にかけた布で二つ三つほどのレンガをこつこつ運んで作っている。完全に三匹のこぶたの三匹目である。切り出した石や、落ちてそうな石を積み上げて作っているのに関しては、もはや理解不能だ。自分が同じ環境にいたら、同じようにするだろうか。一匹目のこぶたの家くらいしか作れそうな気がしない。
積み上げられて作られた家や塀を見るのはおもしろく、よく足を止めては眺めていた。不思議と積み上げられている石は崩れそうな感じがしない。安心感がある。それほど綿密に作られている。見ていてめちゃくちゃおもしろいわけではないが、かといってつまらないわけでもなく、ほどよいおもしろさがある。
石で作られた家や石積みの塀が小道をつくり、村の中はまるで迷路のようになっている。木陰になった小道は味わいがあっていい感じだ。インドの外界と大きく違う。美しく作られた村ほど、子供がよく子守りや食器洗いなどのお手伝いしていたのは偶然ではないだろう。働きものの村は、いろいろと美しいのだ。