パキスタンの首都イスラマバードから北へ700kmほど行ったところにある、標高7,000m級のカラコルム山脈の麓にフンザはある。
フンザとはひとつの町の名前ではなく、旧王国の名前でカリマバードを中心とするいくつかの渓谷をまとめた地域をフンザと呼ぶ。そして、春にはアーモンドや杏、桃などの花が咲き誇る緑豊かなこの地を、人々はシャングリラ(桃源郷)とも呼ぶのである。
フンザに暮らす人々の特徴は、宗派がイスマイール派であることだ。戒律がほかのイスラムの宗派より緩いのと、女性の教育や社会参加に熱心なのももあり、パキスタンのほかの地域とずいぶん違う雰囲気を感じる。
髪や顔を隠さず、外に出て働く女性の姿を見るばかりか、子供にいたっては、学校の制服以外にパキスタンっぽさはなく、ちょいちょい「今どこにいるんだっけ?」と、パキスタンにいることを忘れてしまうほどであった。
フンザに来る前から「気に入るのはここだな」とインスピレーションを感じた場所があった。まれにだが、こういうことがある。
フンザの中心地のカリマバードから歩いて30分ほどにある隣村のアルチット。フンザで2番目に古い歴史をもつ村だ。敵から守るため村は城壁に囲まれ、城壁内部はさながら迷路のようになっている。村の中心にため池のプールがあり、その周りは村人の憩いの場となっている。想像していた以上にのどかで、まるで、おとぎの国にいるような穏やかで不思議な空間が村には流れている。
そんなアルチットで一番仲良くなったのが、美少女三姉妹。着ている服がありきたりな洋服でなかったなら、本当におとぎの国の世界から飛び出してきたかのように思えただろう。