ラダックで暮らす人々の多くは、ラダクスパ(ラダック人)と呼ばれるチベット系民族。ほとんどの人はチベット仏教を信仰していて、服装、食事、風習などに、チベットと共通する文化を持っている。
ラダックでは、チベット仏教が支配的であるが、チベット仏教徒ばかりではなく、多数の宗教が共存している。世界中で宗教が紛争の原因になっているが、ラダックでは、イスラム教徒のシーア派とスンニ派の人々も調和を保っている。
なかでも、イスラム教徒の人口はかなり多い。北西に位置するバルティスタンと呼ばれる地域や、バルティスタンに近い西部のカルギルなどでは、イスラム教が信仰されている。ラダックの中心地であるレーの町にも3つの大きなモスクがある。
だが、共存してはいるものの、大きな争いがないだけで、共同に生活しているというわけではない。異教徒が同じ畑を耕すことはないし、ひとつのテーブルでお茶をして談笑したりはしない。同じ村に仏教徒とイスラム教徒が一緒に暮らしていても、学校は小学校から別々だし、異教徒の子供同士で遊んでいたりもしない。異教徒で棲み分けられている。
異教徒の子供同士は一緒に遊んではいなかったが、ムスリムの子がチベット仏教の仏具である巨大なマニ車を高速で回したり、乗っかって自分も一緒に回って遊んでいた。