ヒンドゥークシュ山脈の山合いに暮らしているカラーシャ族。山あいのもっとも低いところに川が流れ、その脇を幹線道路が走る。カラーシャ族の集落は、その幹線道路沿いにはない。洪水や外敵を避け、川からの比高差150~200メートルほどのところの山の斜面につくられている。
そのため幹線道路からは、どこに集落があるかはわかりにくく、新しくカラーシャの集落を発見するのは骨が折れる。どこにあるかまったくわからないわけではない。ここを行けばたぶん集落はあるんだろうという、おおよその見当はつくのだけれども、集落へは山の斜面をあがらなければならない。よほど体力に自信があるとかでない限り、手当たり次第というわけにいかない。また、ムスリムの集落もあるため、カラーシャ族の集落かは運だ。
それにカラーシャに限ったことではないが、たとえ集落の場所がわかっていたとしても、そこが当たりか、はずれかはわからない。
そんなときのとっておきの方法がある。
学校で見つけたお気に入りの子をストーキングして、その子の住む集落までついていくのである。ストーキングといっても、本当のストーカーのように、こっそりつけまわしたりするわけではなく、ただ、一緒に道草しながら帰っているだけだが。
この方法は、実に効率的だ。迷うことなく集落へたどり着けるだけでなく、すでに仲良くなった子供と一緒に訪れているため、見知らぬ外国人が来たと警戒されることもない。あまりに遠いと帰るのもたいへんであるが、子供の通学圏なのでその心配もない。そして、なによりお気に入りの子がいるんだから、当たりが確定しているのだ。
この日、大のお気に入りをストーキングしてやって来たのは、森の中の道を登った先にひっそりとたたずむ村。外からはそこに集落があるなんて、てんでわからなく、観光客はまず来ない。のどかで、なんとも居心地がいい村だ。
幹線道路から森の中への道を曲がったときから気がついていた。ほんの数日前に、ムスリムの子が通う学校で、そこの一番お気に入りのムスリムガールをストーキングしたときに、来た村と同じじゃないか。
この村の名前はまだ知らないが、きっと美人の里に間違いない。