古来シルクロードの中心都市として栄えてきたウズベキスタンの古都サマルカンド。この町は「青の都」や「東方の真珠」など多くの呼び名をもつ。
サマルカンドは13世紀にチンギス・ハン率いるモンゴル軍の侵攻によって廃墟と化した。それをよみがえらせたのは、英雄ティムールである。ティムールは手に入れた領地から職人や建築家を連れ帰り、サマルカンドをイスラム世界に名だたる帝国の都へと再興した。彼の築いたサマルカンドは、今もなお人の心を惹きつけてやまない。
この土地特有の抜けるような青空と、平和を象徴する青色タイルで装飾された建築物が「青の都」と呼ばれるゆえん。建物を飾る鮮やかな青色タイルは、ペルシャの職人の技術をもとに、中国の陶磁器とアラブの顔料が融合して誕生したシルクロードが生んだ芸術だ。この美しい青色はサマルカンド・ブルーと呼ばれている。
サマルカンドで、いやウズベキスタンでもっとも有名なのが、レギスタン広場。サマルカンド・ブルーといえばここが紹介される。レギスタン広場は、ウルグベク、シェルドル、ティラカリの3つのメドレセから成る。メドレセというのは、イスラム教建築の神学校のことだ。レギスタン広場の3つのメドレセは、見事なまでに調和し、その存在は圧倒的である。
ただ、このレギスタン広場が青いかといわれれば、首をかしげたくなる。建物には青色タイルは多くつかわれているものの、青色以外のタイルも多く、見た感じは薄めの青色と茶色の建物だ。正直、青いっちゃ青いね、ってとこである。広場正面に立つティラカリ・メドレセの内部は、大量の金を使用した豪華絢爛な装飾がほどこされていることもあり、実際、見終わったあとに青かったという印象は残らない。
真のサマルカンド・ブルーを見たければ、レギスタン広場よりシャーヒズィンダ廟群へ行くべきだ。ティムールゆかりの人々が眠るシャーヒズィンダ廟群には、レギスタン広場のようなスケール感はないものの、ほぼ一直線につづく死者の通りと呼ばれる狭い通りの両側に、青色タイルで装飾された11の霊廟が建ち並ぶため、まさしくサマルカンド・ブルーに囲まれることになる。死者の通りの青色タイルは、レギスタン広場よりも、ぐっと濃く鮮やか。まさに青の中の青の世界である。
青空の日は天と地で青さを競い合う。さまざまな青のグラデーションが織りなす美しさ。真のサマルカンド・ブルーは心の奥底を打つ。