少女が今にも消えてしまいそうな声で、繰り返し何かを言ってくる。ちっとも聞き取れないので、耳を口元に近づけて聞いてみると、「ジェンブデー、ニマン」と言っていた。まったく何言っているかわからなかったが、しばらく考えて、日本語だということに気がついた。「全部で2万」。意外にも日本語だったので、わからなかった。
よく見れば、ビニールひもで編んだカゴバッグを提げた手には、ポストカードを持っていた。観光客を相手にポストカードのセットを、2万インドネシア・ルピアで売っているらしかった。
なんとも可愛らしい女の子だったので、買ってあげたいところだが、私は子供からは物は買わないことに決めている。店番のお手伝いをしているとかでない限り、買うことはない。
アジアの観光地では、こういった子供の売り子を見かけないほうが珍しいくらいだ。大人が売るよりも、子供が売るほうが売れるんだろう。観光客の財布のひもも緩みやすい。当時は、1万インドネシア・ルピアが100円くらいだったから、200円くらいの安いものであるが、値段とかの問題ではない。買ってあげることは、たやすいけれども、児童労働が好きじゃないのである。