単なる恥ずかしがり屋ではなかった。
笑った顔が可愛くて、写真を撮ろうとするのだが、なかなか撮らせてくれない。それでも、笑いながら隠れていたので、嫌がっているふうには見えなかった。はじめに学校で会ったときは、そんな印象だった。
彼女の住んでいる村へ行ったときに、彼女が写真をさける理由がわかった。村で会った彼女は、まるで別人のような表情で過ごしていた。彼女の住む村は、カラーシャの谷のなかでも随一の観光地。パキスタン人の観光客がひっきりなしにやってくる。
都会からやってきた金持ちそうな観光客。なぜだか、少額のお金やお菓子を配り歩くように用意してきている。そして、子供を見つけては配る。子供らはお金やお菓子は貰うものの、別にそれで懐きはしない。それなのに、写真を撮ろうとするもんだから、避けられたり、写真に収めるも嫌がった表情をしている。観光客も、観光客に撮られる写真も嫌いなのだ。
ここではカラーシャ族だけでなく、私も同じくらい写真を求められた。パキスタン自体、外国人の旅行者が極端に少ないので、よく一緒に写真を撮ろうと言われる。多いときには、1日に10回以上も応じていた。
快く応じているというわけではなく、そうしたほうがさっさとどっか行くので、手っ取り早いのだ。だけども、子供たちはそうなふうには割り切れないようで、写真を嫌がるしかできないようであった。何度も写真に応じる私を子供たちは不思議そうに見ていた。