時刻は6時過ぎを表示していた。
ネパールの小学校で、珍しく腕時計をしている女の子がいた。プラスチックのおもちゃのようなものではなく、しっかりとした作りのピンクの腕時計。右利きなのに、右手に腕時計をしていたため、なにかと腕時計が目立つ。利き手は自然とよく動かすから、腕時計が目に入るのだ。
日本だと腕時計は、基本的に利き手ではない方につけるのが一般的だが、ネパールでは違うのだろうか。ノートに字を書くときに、利き手に腕時計をつけていると邪魔に感じたりしないのだろうか。そんな疑問を抱きながらも、彼女の手を取り、腕時計を見せてもらう。
デジタル時計だった。それはいいのだが、表示されていたのは、6時をちょっと過ぎた時刻。小学校での出来事なので、もちろん朝の6時でもなければ、夜の6時でもない。実際の時間は、午後2時くらい。一体、何の時間なんだ？
時計の時刻がずれてるというレベルではない。ここまで大きな開きがあると、もう何の役にも立たない。本来の時刻を知ることもできないし、よけいに混乱するだけだ。
それでも彼女は、腕時計を見せてと言われたことが嬉しそうであった。きっと、時間が合ってるかなんて関係ないのだ。時間を確認することが目的ではなく、腕時計を買ってもらったことや、腕時計を身に着けているってことに価値があるのだ。