網を張るか、狩りに出るか。街歩きで被写体を見つける方法は、人通りのありそうなところで通りすがりの人を待つか、歩いて探すか、このどちらかになる。どちらかが確率が高いとか、効率がいいとか、そういうことはない。完全なる運だ。
ただ、写真を撮りたいと思うような相手を見つけることは、そうたやすくはない。見つけようと思って、見つかるんだったら苦労はしない。
はじめて訪れたネパール中部の町、ゴルカ。2008年まで240年間続いたネパール王国の前身となったゴルカ王国の地。静かでこじんまりした町とのことだったが、思いのほか広く、せわしなく、自分の場所を見つけることができずにいた。もう、丸二日ほどゴルカの町を歩き回ったが、写真を撮ったのは、菩提樹の写真だけだ。
残された時間的に、次がラストチャンス。どうするか悩んだ末、最後に網を張ることにした。30分もしないうちに、下校中の子供を中心に10人強が集まった。だけども、突出して可愛い子は見当たらない。まだ、もう少し待つか、この集まった中から誰かをチョイスするか、悩ましい。
ただ、ひとりだけ気になっている子がいる。中学生の女の子で、すごい美少女の気配がしてるんだけど、マスクをしているのだ。訪れた2022年の年末は、町中では新型コロナに関するすべての規制がなくなっており、マスクの着用も任意であったが、中学生くらいは半分くらいの子がマスクをしていた。見えている顔だけでは、決定打に欠ける。マスクを取ったらがっかりしたなんてのは、このコロナ禍で頻繁にあったことだ。マスク顔の下に、理想の形を想像してしまう。勝手に想像して、勝手にがっかりする悲しい現象だ。
今ここで、マスクを取ってもらって、顔を確認したいところだが、そうもいかない。顔を見て、可愛かったら、君に付いて行くわってのは、さすがに気味悪いし、逆に可愛くなかったときに、じゃあバイバイとも言いづらすぎる。ここはマスク美人に賭けるしか道は残されていなさそうだ。