写真は引き算といったりする。1枚の写真にあれこれと詰め込みすぎると、見せたいところがあやふやになって、まとまりのない写真となってしまうことが多いので、必要のないものはなるべくフレームに入れないように撮る。フレームに何を入れて、何を入れないのかを決める。これが、写真の引き算だ。
だが、撮っていていつも感じるのは、写真は引き算とか足し算ではなくて、かけ算だということだ。
写真というのは、被写体や構図だけじゃない。ほかにも、明るさや光の当たりかた、アングル、ピントなどと考えないといけないことが多々ある。こういったものがすべて完璧にいけばいいのだが、そういったことはまずない。基本的に、ほとんどの項目は平均点。だから、なにかとなにかがうまくいったからといって、その写真がよくなるわけではない。1+1=2でなく、1×1=1、1のままなのである。そのなかで、なにかが抜きん出て良かったりすると、写真の出来が跳ね上がる。
またその逆に、なにかが0点だと、その写真はボツにもなる。よく0点を叩き出すのは、なんといっても光だ。自然光だと、時間帯を選ぶし、天気にもよる。場所も限られるし、明るさの調整もしにくい。ほかのことはなんとかなるが、光だけは本当にどうしようもないときがある。強すぎる光や、明暗差のはげしい環境で、自分の立ち位置を変えることができない場合なんかは、どうやったらいいか、いまだにわからない。
写真に正解はない。けれども、自分のなかの正解は持っておくべきだ。だが、その正解が見当たらないときは、やっぱりあるのだ。