カラーシャ族が住むのは、ヒンドゥークシュ山脈の山間の谷。そのほとんどの道は舗装されていない。一部、村を通る道や、村への階段や坂道、用水路脇など、コンクリートで舗装された部分も増えてきているものの、九分九厘は舗装されていない。そのため、カラーシャの村々を歩くと、たちまち靴が汚れる。
毎日毎日、土ぼこりまみれになる。とくに旅の始まりのほうは汚れかたがひどい。不思議なことに、次第に汚れ度合いはましになってゆく。歩き方が上手くなっているのだ。日ごろ、日本で生活しているときには、歩き方に上手い下手があると思っていない。歩くという行為は、人間にとって基本的なもので、歩き方など意識していない。仮に歩き方に上手い下手があったとして、一応はできてはいるので、大きな違いがないのだ。
しかし、カラーシャでは靴が汚れる。それが嫌で、意識して歩くようになるのである。ただ、その経験値は引き継がれることなく、毎回ふりだしに戻っている。
カラーシャの村は、洪水などの自然災害を避けるため、山肌に沿って家が建てられている。それゆえ、坂道が多かったり、アップダウンをさけて山道のようなところをショートカットで歩いたりすることも多い。そのことから、カラーシャへは動きやすいスニーカーを履いていく。土ぼこりで汚れるので、スニーカーは布製のものでなく、ウエットティッシュで拭ける皮革製のものだ。ただ、スニーカーに多い、靴ひもが悩みの種だ。靴ひもがあると、拭きにくいったらありゃしない。
カラーシャへ履いていく靴の最適なものはなにか。一度、現地の子供をまねて、サンダルで行ったことがあるが、落ちてる石で何度も指を切って流血しまくりであった。いっそのこと、スリッポンの革靴がいいんじゃないかと思ってきている。だがしかし、土ぼこりまみれになるところや、よく歩く旅行に革靴を履いていったことがないため、ためらいしかない。