カラーシャの特徴は、なんといっても女性の民族衣装。黒の貫頭衣にカラフルな模様を毛糸で刺繍している。特別な日だけではなく、普段からこの民族衣装で暮らしている。
大人から子供まで同じ民族衣装ではあるが、刺繍には流行があり、子供のほうがだいぶと派手である。伝統的な色や模様も残っているが、蛍光色も珍しくない。刺繍の範囲も広く、そのため模様にも違いがある。近年は刺繍ではなく、レースやあらかじめ装飾された美しい布地を縫いつけたものも増えている。
民族衣装は美しいが、実際に着ている子供たちの服は、かなり汚れている。民族衣装のなかに着ているインナーはもっとひどく、目も当てられない。服だけでない。顔も汚い。何日も水浴びしてない汚さである。鼻あたりにびっちり鼻水が固まってついていたり、首まわりが垢で黒ずんでいたりする。
カラーシャの衛生観念は低い。家もカビなのか、すすなのか、何なのか不明だが、びっくりするくらい黒ずんでいる。木造建築は年月とともに古びた色合いに変化していくものであるが、そういうレベルではない。また、室内では謎の節足動物が徘徊したりするが、それを気にしてる様子はない。
子供も汚れていることを好んでいるわけではない。首まわりが汚れていることを学校の先生に指摘されたら、ばつが悪そうに服を伸ばして隠そうとしたり。あるいはまた、撮った写真をモニターで見て、顔が汚れていることに気づけば、顔を汚れを落とそうとしたり。顔が汚れているからと、ウエットティッシュを渡せば、ちゃんと拭くし、顔を洗ってくるようにうながせば、ちゃんと洗ってくる。
子供は汚すのが仕事だなんていうのだから、汚れるのは仕方がないのだろう。そして、いつもきれいな状態を維持しておくのは、たいへんなことであろう。それでも、汚れを取ってやるのが大人の仕事である。
たとえ、砂場で転げ回って、砂まみれで帰ってこようとも。