旅行先で偶然にお祭りに出くわすこともある。日常の風景を見るのが好きなので、お祭りはみんな楽しそうにしてるものの、人が多かったり、忙しそうだったりするので、偶然にお祭りがあったとしても、あまり嬉しくはない。祭りより、普通がいいのだ。
全部の祭りが嫌なわけではなく、なかにはうれしいものもある。パレードのようなものや、コンテストやショー的なのは好きじゃない。盆踊りやハロウィンような、全員参加型のが好みだ。だけども、タイの水かけ祭りのようなバカ騒ぎするは苦手。そう、静かなのがいい。ただし、花火大会のような鑑賞するものではなく、主役は人で一般人。みんな楽しそうってのが好き。
こんなのにも好みの祭りが極端に少ないが、トゥルトゥクから立ち去る日がそんなお祭りだった。この日は朝から子供たちはみんな着飾っていて、いつもより色鮮やかで、いつもより民族衣装っぽい服。民族衣装っぽくなくても、おニューの服を着ていたり、アクセサリーもたくさんつけてたりと、めいっぱいのおしゃれを楽しんでいる。私のお気に入りの子なんかは、完全にお祭り用の服。ヒジャブにも装飾品が付いていて、とっても可愛らしい。こうやって子供が着飾ってるのを見るのは、愛情が感じられて好きだ。
大人たちは朝から着飾るのではなく、牛やら羊やらを解体にいそしんでいた。解体を終えた肉や臓物を水路で洗うもんだから、その日の午前中はどこを歩いても血みどろのおぞましい光景で、自然と苦笑いが表情の中に浮き出してきたのを覚えてる。
このお祭りで気になったのが、おめかしした子供たちが一様にビニール袋をもって、近所の家に次々と押しかけていたこと。ハロウィンのお菓子強盗と同じかと思ったが、誰ひとりビニール袋に物が入ってないので、何をしてるのかは不明。突撃しては、しばらくして出てくる。それを何度も繰り返していた。お菓子だったら、あんなに意気揚々とお家に突撃して、誰も貰えないのはちょっとかわいそう。お菓子など、ものをあげるのは好きじゃないけど、次に来るときにまたお祭りがあるようだったら袋いっぱいあげたいと思い、あとで調べてみたところ、このお祭りはイスラム教の謝肉祭だったらしい。謝肉祭では、犠牲にする牛や羊の3分の1を家族で、3分の1を友人に、3分の1は貧しい人々にわかち食べる習慣があるという。みんなお菓子でなく、肉を貰いに突撃してたのだ。肉か。トゥルトゥクにはスーパーマーケットどころか、肉屋もないので、肉はちょっと私にはあげられないな。