ラダックはチベット文化の西の端にあたり、インドに併合されたため、中国の文化大革命の影響は受けず、多数のゴンパが残る。ゴンパとは、チベット仏教の僧院のことで、ラダックのゴンパはたいてい岩山の上にあり、頂上に本堂、山の中腹には修行僧が生活する僧坊が密集している。ひとつの町となっている本場チベットのゴンパの僧房群と比べたら、規模は到底及ばないが、そのたたずまいは岩山に築かれた要塞を思わせる。
ラダックのゴンパというと、へミスやティクセ、アルチ、ラマユルなどが有名だが、なかでも一番の魅力をもつのが、チェムレ・ゴンパだ。チェムレはかっこいい。それしか言葉が出てこない。チェムレの人の心を惹きつける力は、頭ひとつ抜きん出てると思う。
チェムレ・ゴンパはラダックの歴史の中でもっとも有名な王、センゲ・ナムギャルの死を弔うために17世紀に建てられた。へミスの分院、カギュ派に属する。へミスは建立して以来、王家の菩提寺とされてきたゴンパで、近年はダライラマの属する宗派であるゲルク派のティクセの発展がめざましいが、ラダックでもっとも信仰を集めている。
まあ、そんなことはどうだっていい。とにもかくにも、チェムレはかっこいい。そして、とても絵になる。荒涼とした山々と青空をバックに建つ。その雄大な姿は虜になること間違いなし。