荒野の村にひとり降り立つ。勝手に村に足を踏み入れていいのかさえわかっていない。いまだかつてないアウェイ感に心臓が高鳴る。とりあえず、村人を探して、足を進めるほかない。怖えええ。しかし、こちらに気付いた村人達は、ジッとこちらを見つめているだけであった。
無理もない。訪れたカッチ地方のジャット族の村は、観光客など来ないところだった。観光客慣れしていないとかってレベルではなく、観光客どころか、コミュニティ以外の人はまず来ない。外国人なんて、今まで来たことがなさそうである。
ジャットの女性は保守的で、写真を撮られるのも嫌がるということは、前もって知っていたのだが、思っていたものとは違うアウェイ感であった。外部の人間を遮断したり、異なる価値観や意見を受け入れないみたいな排他的なものはなく、何でこんなところに外国人が?というような、よそ者に対する警戒である。
いつも外国で写真を撮るときは、本人や周りの大人に写真を撮ってもいいかを軽く聞くくらいだが、そんな感じではいける気配はない。まずは村の権力者っぽい人に、訪問の目的と村を見てもいいか、それと女の子の写真を撮りたい旨をGoogle翻訳を使って伝える。反応はまちまちで、歓迎してくれるところもあれば、写真はNGというところもあった。はっきりと拒否はされないものの、あきらかに歓迎はされていない感じが伝わってくるところも多かった。
もともとアウェイな感じが嫌いではなく、逆に未知との出会いが楽しみだったりする人間であれば、こういうのも楽しいのかもしれないが、そうではないので、極度のアウェイ感におびえて、頭が真っ白になってしまう。そんな精神で撮影したからだろう、せっかくの写真はみんな斜めに傾いていた。