日本で暮らす日常なら、なんとかなることも、言葉も土地勘も心もとない異国の旅先となると、「想定外」が途端に手強くなる。
たとえば、ある日突然、明日が誰かの誕生日だと知らされたとき。
住み慣れた街なら、夜遅くまで開いている雑貨屋へ駆け込んだり、花屋を検索したりと、いくらでも手立ては思いつくだろう。しかし、旅先の見知らぬ街では、その最初の一歩目すらどこへ踏み出せばいいのか、わからない。
お祝いの花を一束、あるいはささやかなプレゼント。旅行者として知っている知識では、心のこもった贈り物を選べるような小粋な店など、そう簡単に見つかるはずもない。
また、予期せぬ訪問者にも、うろたえる。
ときどき、子供たちがひょっこりと宿に遊びにくることがある。そんなとき、お菓子のひとつでも出してあげたいと思うのが人情だ。けれど、普段から甘いものを口にする習慣がないので、カバンには飴玉ひとつさえ入っていない。
特別なおくり物がなくても、喜んではくれる。それはわかってはいても、どうしようもないもどかしさを感じてしまう。