一般的に「〇〇ロス」とは、対象を失ったあとに訪れる空虚感を指す。けれど、心が削られるのは、すべてが終わったあとの静寂だけではない。
本当のロスは、もうすぐいなくなることを予感したその瞬間から、すでに始まっているのではないだろうか。
まだ目の前には本人がいて、笑い声も聞こえる。それなのに、心の中ではもう、彼女のいない風景が静かに侵食し始めてくるのである。
彼女の住む地域では、小学校は5年生で終わる。中学校からは男女別々になり、部外者が女子校の中をのぞき見ることは叶わない。
よく遊びに行く村に住んでいる子であれば、卒業後も再会は可能だ。だが、それ以外の大抵の子とは、卒業を機に、よほどの偶然が重ならない限り、二度と会うことはなくなってしまう。
彼女はまだ知らない。卒業を境に、道が二度と交わらなくなることを。けれど、結末を知っているこちらは、卒業するずっと前からロスという名の空白を、時間をかけて自分の一部として飼いならしていくしかないのだ。
ようやくその空白にもなじんできた頃、偶然の再会。
学校の制服姿しか見たことがなかったので、鮮やかな民族衣装に身を包んだ彼女は、ひどく新鮮に映った。
再会を喜ぶ脳裏で、同時に警報が鳴り響く。せっかく一度は癒えたロスの痛み。それをまた、最初から手なずけていかなくてはならないのか、と。