私の耳は、不公平にできている。基準はただひとつ。「私がその人を好きかどうか」だ。
好きな子が放つ言葉は、スルスルと心に染み込んでいく。なにかを頼まれれば、なんだって秒速でうなずく自信がある。
ところが、相手が嫌いな子になると、私の耳は即座に鋼鉄のシャッターを下ろす。
しかし、この鉄壁のセキュリティシステムを裏口からかいくぐろうとする姑息な連中がいる。嫌いな子が、私の好きな子を経由して、頼みごとをねじ込んでくるパターンだ。
やつらは知っているのだ。自分では私のシャッターを1ミリもこじ開けられないから、私の「好き」という感情を人質に取り、私の好きな子を利用するのが一番効率的だと。
好きな子の顔に免じてという情け深い妥協を期待しているのだろう。けれど、あいにく私のシャッターはそんなに甘くない。その姑息な計算が透けて見えた時点で、それはもう好きな子の純粋な言葉ではなく、汚染されたノイズなのだ。
だから、たとえ天使のような子の頼みであっても、背後に悪魔の影が混じるなら、私は笑顔でそれを叩き斬る。
私の耳は、不公平なままでいい。