旅先で現地の人の写真を撮るうえで、ひとつ心に誓っていることがある。それは撮った写真を売ったりして、お金を儲けないことだ。
彼らがカメラに向かって見せてくれる笑顔や、ふとした瞬間の姿は、決して私に利益をもたらすための素材ではない。私を刺激する被写体である前に、その土地でふつうに暮らしているひとりの人間だ。そんな姿を見せてくれるのは、見ず知らずの旅人である私を受け入れ、一瞬の時間を共有してくれたという、純粋な好意そのものである。
もしその写真を売って私が金銭的な利益を得てしまえば、それは相手の好意を裏切る行為になってしまう気がしてならない。
「この笑顔を売れば、いくらになるだろう」。そんな雑念が一度でも頭をよぎれば、相手の心を見失ってしまいそうだ。お金が絡んだ瞬間に、対等だったはずの「人と人」の関係は、ただの「撮る側」と「利用される側」という歪んだ構図へと変わってしまう。
写真は売らない。シャッターを切ったその瞬間に、対価はもう受け取っている。これ以上、何を望む必要があるだろう。