そこはまるで「風の谷のナウシカ」の世界のよう。険しい山々の谷間に緑の平原が広がる景色は、主人公のナウシカが住む集落「風の谷」を彷彿とさせる。
ラダックの北部、標高5,000mを超える峠を越えて、世界の果てとも言われるヌブラ渓谷をシャヨク川沿いにどんどん進むと、見渡すかぎり不毛の大地の中にポツンと取り残されたように現れる集落。そんな小さな村々といくつかのチェックポストをとおり、たどり着くのがシャヨク谷の奥地にある、トゥルトゥクだ。
トゥルトゥクの村は、澄んだ渓流をはさむ形で広がっていて、あふれんばかりに緑豊かな村。アンズやポプラの木々がおりなす木漏れ日のしたに石造りの小道や橋が続いている。村には水路が張り巡らされ、清らかな水が流れている。車やバイクは入ってこれない。耳をすませば、鳥の鳴き声と風の音くらいしか聞こえない。時間は実にゆったりと流れる。
前回撮った写真を配ろうと持ってきたが、少し期間が開いたので、記憶もあいまいでちっともわからない。以前に来たときより建物が増えているのが、わからなさに追い打ちをかけている。しばらく歩いたが、一枚も配れていない。弱った。さて、どうやって配ろうか、まあ、答えは決まっている。誰かに聞くほかない。そう思っていた矢先に出会った子供たちに聞いたら、次から次へとあちこち案内してくれ、あっさりと配り終えた。谷間での生活もそうなのだが、なによりもこういった人の姿が「風の谷」を連想させるのだ。