町の綺麗さというのは、その土地の治安や、人となりに、大きく関係しているように思う。
ラダックはあちこちに大小の集落が点在しているが、そこでもゴミが落ちていたり、家畜のフンが放置されていたり、家のつくりの精巧さであったりで、人の違いを感じることは多い。
いつも綺麗に保たれているところというのは、コミュニティ意識が高いのだろう。道や共同の施設を当たり前のように掃除していたり、お年寄りが道端や家の前でおしゃべりをしているようなところは、まず安全でいて、居心地がいい。清潔にしているのだから、当然のごとく悪臭もなく、害虫も少ない。そんなことだけでなく、人もフレンドリーで優しいような気もする。そしてそういった村は、だいたい教育にも力を入れていて好感が持てるのだ。
ラダックの北西部にドクパと呼ばれる人々が暮らしている。ドクパの住む有名な村は、前回にそれなりに訪れたので、今回は観光客など来なそうな近隣の村へ行ってみた。そこは仏教徒の多いドクパの村とは違い、イスラム教徒の村。このあたりには観光客がドクパを求めてやって来るので、ガイドブックには載っていないし、観光客はせいぜい商店で買ってとおりすぎて行くだけの村だ。
商店は車道沿いにあるが、実際の村は車道から外れ、丘を登ったところにある。ひいこら息を切らしながら村へ着いて驚いた。めちゃくちゃ綺麗な村だ。ラダックで見た村のなかでは一番かもしれない。
人も雰囲気もいい。平日の午前中だったので、村ではお年寄りが多く、おばあさんは家の前で、おじいさんはモスクに集まってお喋りしており、なんとも平和な時間が流れていた。
村の上のほうに学校がふたつ見える。ふたつ共小学校のようが、小学生など50人もいないだろう村に、なぜ、ふたつの学校があるのだろうか。眺めていると村の人が教えてくれた。どうやら私立と公立の学校らしい。
公立のほうはかなり人数が少なそうだったので、私立のほうに行ってみる。子供らは行儀よく、楽しそうに勉強していて、気持ちのいい学校だった。緑に包まれたムスリムの女の子の制服も可愛い。
すっかりこの村が気に入ってしまった。午後は違う村へ行く予定だったが、昼食後にまた戻って来たほどだ。この村のこの有りさまは、観光客が来ないおかげでもあるので、この村の名前は秘密にしておきたい。