目を見張るカラーシャの女性の衣装。
黒地にカラフルな毛糸で花や葉、幾何学模様などの刺繍をあしらったワンピースのピルハン、それに着物の帯のようなパティを腰に巻く。
より特徴的なのは、ビーズや貝や金属製の飾りを縫いつけた頭飾りのシュシュット。大きく円形に開いた輪っか状の冠で、後ろ側は背中に届くほど長く垂れ下がっており、そこにもびっしり装飾している。
首には何十束ものビーズのネックレス。これらを普段から身に着け生活している。
写真を撮るとき、構図はファインダーをのぞいて、瞬時に考えている。多くは、目の位置と体の向き、それでどういった構図にするかを決める。
構図に関して、いつもはそう悩まないのだが、カラーシャの女の子を撮っていくうちに、どう撮っていいか、わからなくなってしまった。
原因は頭のシュシュットだ。美しいのでフレームに入れたい。頭の中でひらめいた構図に合わせ、カメラを動かしたのち、頭の上に乗っかっているシュシュット分、少し下げる。当然いつもより目の位置が低くなる。そこにやはり違和感がある。だんだん上に空けたスペースもおかしい気がしてくる。
シュシュットの大きさやかぶり方によって、シュシュットの高さや見える部分が変わってくるのが、また混乱を助長させる。
今まで頭頂部をフレームに入れるか入れないかで、悩んだことはなかった。切れてようが重要ではなかったからだ。
今まで気にしていなかったことを意識するようになってからおかしくなった。
ファインダーをのぞいても、いつものように構図がパッと思いつかない。いつもどうやって撮っていたかも思い出せない。
そして、それは帰国するまで続いたのだった。