「ボーイ?ガール?」しばらく遊んでいたカラーシャの女の子のひとりが聞いてきた。
ボーイでもガールでもないが、まあ、性別を聞いてるのだろう。そうはいっても、いい歳して自分で、ボーイと口にするのは、こそばゆいものがあり「ボ、ボーイ」とどもる。
外国の子供が性別を聞いてくること自体は珍しいことではない。何年かに一度あるくらいだが、たまにあるのだ。
それよりもだ。聞いてきたのが一時間以上も経ってからだったことが驚きだった。今までずっと男か女かわかんねえやつだと思われていたのか?
性別を聞いてくるなんてのは、いつも小学生くらいのもんだったが、カラーシャの村では違った。大人も聞いてきた。特にお年寄りには毎回のように聞かれた。
カラーシャでの挨拶は「イシュパータ」といい、そのあとに相手が男性なら「バーヤ」、女性なら「バーバ」をつける。
だけども「イシュパータ・・・」と言って、そこで止まる。そして、私についているカラーシャ族の護衛に、私が男なのか女なのかをたずねるのだ。
なぜ、性別がわからないのか、わからなかった。髪は長めなほうだけど、せいぜい耳にかかる程度だ。イスラム教徒のような立派なひげがないからかとも思ったが、カラーシャはイスラム教ではなく、護衛のおじさんも毎朝ひげを剃っている。別に女のような服装をしているわけでもない。
結局、最後まで理由がわからなく、ずっと聞かれ続けた。おかげで性別不詳というあまりない出来事にも、なんだかすっかり慣れてしまった。私も慣れたが護衛のおじさんも慣れた。相手が「イシュパータ・・・」で止まるやいなや、聞かれる前に「バーヤ、バーヤ」と言うようになっていた。