カラーシャ族の民族衣装が、もっとも美しく輝く瞬間。残念ながら、その写真はない。
カラフルな毛糸で刺繍をあしらっている、黒いドレスのピルハン。ピルハンのスカート部分は、フレアスカートようにゆったりめの作りとなっている。そのため生地が折り重なっている箇所は刺繍が見えない。この刺繍が、単純に手で広げて見るより、美しく輝く瞬間がある。
カラーシャの子たちは、歌や踊りが大好き。ノリのいい歌のときには、必ず誰かが歌に合わせて踊り出す。このときに踊るのは、両手を阿波踊りみたいに上げて、くるくると回るバズムという踊り。この、くるくる回るときに、スカートがふわりとふくらみ、綺麗に見える。空気をはらんで、ふわっと広がるスカート。まるで、この瞬間のために作られたスカートのよう。ひるがえすスカートの軌道の美しさに、思わず見とれてしまう。
この瞬間の写真がない理由は、動画を撮っているからだ。歌っている姿を、どれだけ素敵に写真に撮れたとしても、歌は写真に残らない。写真を撮るより、動画に残すほうを優先しているのもあるが、もうひとつ理由がある。カラーシャの子たちが歌い終わったあとに、その動画を見るのを楽しみにしているからだ。動画を撮らないわけにはいかないのである。
動画を芸術的に撮ることに興味のない私は、動画を撮るのはスマホ。撮った動画を見せるため、子供たちにスマホを渡していると、動画を見るだけじゃ飽き足らず、自分たちでも写真や動画を撮っていたりする。そのときの動画は、歌や踊りだけじゃなく、変な小芝居の動画が入っていたりするのがおもしろい。笑える反面、ものすごい量の写真が撮られていたり、見たことのないロックがかかって戻ってくるという、試練もついでに待っている。