イスラム教徒が圧倒的多数を占めるパキスタンにおいて、独自の信仰と文化を維持しているカラーシャ族。周囲のイスラム教徒は彼らをカフィール(異教徒、不信心者)と呼び、その地をカフィリスタン(異教徒の地)と呼ぶ。
かつては国境を越えたアフガニスタン側にもカフィリスタンが存在したが、1895~96年に当時のアフガニスタンの王、アミール・アブドゥル・ラーマンによって、イスラム教へ強制的に改宗させられた。そして、カフィリスタンという地名もヌリスタン(光の地)へと改められたことにより、パキスタンのカラーシャの谷だけが唯⼀の存在となっている。
そんな異教徒の地であるカラーシャの谷にも多くのムスリムが住んでいる。谷に移り住んだムスリムもいるが、カラーシャからイスラム教に改宗した者も多い。
カラーシャの谷のカラーシャ族とムスリム関係は良好に見える。カラーシャ族とムスリムが同じ村に住んでいる村もある。カラーシャ族だけの学校、ムスリムだけの学校もあるが、共学の学校も多い。対立しているとかはまったくなく、カラーシャ族とムスリム、お互いのアイデンティティが喪失するのでもなく、押しつけるのもでなく、共存している。