マケドニアという国をご存知だろうか?東ヨーロッパのバルカン半島に位置し、面積は九州の約3分の2、人口およそ200万人の小国。かつては1992年まで存続したユーゴスラビア連邦の構成国のひとつであったが、1991年に分離独立をした。
このマケドニアへ行ってみたかった理由は少し変わっていた。なにかで見た「外国人に対するホスピタリティの高い国」のランキング。マケドニアは1位ではなかったが、名の通ったヨーロッパの国々が並ぶなか、マケドニアという馴染みのない国がベスト10内にランクインしていて、あきらかに浮いていた。こういうランキングは、どうしても有名な国が上位にきてしまう。マイナーな国はそもそも行ったことのある人が少ないからだ。そんななかで、マケドニアというマイナーな国がランクインしてるなんて、これは本物じゃないのじゃないかと見てみたかったのである。
そのランキングを見てほどなくしたころ、日本ではオリンピック招致のプレゼンテーションで「お・も・て・な・し」のスピーチが話題となり、しきりに「おもてなし」という言葉がつかわれていた。日本には「おもてなし文化」があるというのだが、違和感しかなかった。日本の接客サービスの質は高いと思うものの、ビジネスにおけるホスピタリティの提供と、ホスピタリティ気質とは、まったく別次元のものだ。いうほど、日本人って高いホスピタリティ精神を持っているだろうか。お金を払わないところで、「おもてなし」をうけることってそうあるだろうか。
テレビで「おもてなし」と聞くたびに、マケドニアが呼んでいる気がした。
そんなマケドニアのホスピタリティはどうだったかというと、わりと普通だった。マケドニアの人のホスピタリティが低かったわけではない。親切な人はたくさんいたし、人はおおむね優しかった。もてなしを受けることも多かった。ただ、それまでに訪れたとことのある東南アジアや南アジア、中央アジアの国とさして違いはなかった。わかっていたことだが、今まで行ったことのあるアジアの国も、ホスピタリティの高い国だったってことだ。
アジアの国との違いは、マケドニアでは日本人はおろか、東洋人は珍しい存在で、やたらとじろじろと見られることが多かった。じっと見られていては、気まずいので、目が合えば微笑んだり、会釈したりするのだが、視線をそらされるだけで、幾度となく心が折れそうになったことである。