散歩を楽しむには、コツがある。それは、いつもよりゆっくり歩くことと、散歩に何も期待しないことだ。
普段のどこか目的地へと歩くスピードでは早すぎる。散歩では目的地があることもないこともあるが、目的地に着くことが目的ではない。急ぐ必要なんてない。散歩の道中を楽しく過ごすことが目的なのだ。
味のある年代物の建物。名前も知らない木や花。普段は気にも留めないが、じっくり見てみる。小さな路地裏へ寄り道するかに悩み。何を買うわけでもないが、店でどんなものが売ってるのかとのぞき見る。ときには、空を見上げたり、地面を見たり。
やはり、いつもの歩くスピードでは早すぎる。ただ、ゆっくり歩くというのは、思いのほかむずかしいものだ。ついつい、いつものスピードで歩いてしまうのである。特に旅のはじめは、強く意識しないとゆっくりと歩けなかったり、ゆっくり歩くことがかえってしんどかったりする。そういうときは、ゾンビになったと思って歩くと、ちょうどよくなるので、おすすめする。
それと、散歩をすれば、何か素敵なものに出会えるかも、とかそういうことを期待して出かけちゃいけない。何も期待しないで散歩をするほうが、自分のなかに受け入れやすい。何かに期待をしていると、それ以外のものが入ってこないのだ。何も期待しない散歩のほうが、さまざまなことに気づき、驚き、好きな街へと変わるだろう。