ウズベキスタン人の9割は、イスラム教をスンニ派を信仰しているが、ウズベキスタンはいわゆる「ゆるいイスラム教」の国である。レストランでお酒も飲めるし、女性の服装も半袖や膝丈くらいのワンピースなんかは普通。毎日お祈りしたり、ラマダン(断食)する人のほうが、かなり少数派だ。
世俗主義と政教分離がかなり徹底されており、宗教は個人主義で他人に干渉しなく、個人の意見が尊重されている。お酒を飲む人もいれば、お酒の瓶をさわることすら嫌がる人もいる。毎日5回モスクにお祈りしに行ったり、ラマダンする人もいる。同居する家族のなかでも、ばらばらだったりする。
中高年の世代は、ソ連時代に無神論が唱えられていたこともあり、特にゆるい。また、1990年代には厳格なイスラム教徒の表徴である長い髭を生やした男性などへの迫害があったり、2000年に入ってもバザールなどで警察がヒジャブ姿の女性を摘発したりしていたらしく、そういったイスラムっぽい風貌の人は、まず見ることがない。
逆に、今の若い世代の成人、20〜30年代あたりの人がもっとも厳格に守る人が多くなってきている。以前には見ることがなかった、ヒジャブを着用している女性も明らかに増えた。小学生でも、ヒジャブを着けて学校に行く姿や、公園で遊んでいる姿を見かけるようになった。ソ連末期のぺレストロイカ以降に、ウズベキスタンでイスラム教が復活したとされているが、本当の信仰が自由が認められたのは、ごく最近になってのことなのである。
下校途中の数人の子と出くわした。小1と思われる幼い子たちのグループ。そのうちのひとりの女の子は、私のことを知っているようで、背負っていたリュックのポケットからキャンディーをひとつ取り出し、それをくれた。
ああ、あの子か。前に会ったときは、2、3歳と小さかった。そうか、あんな小さかった子が、もう学校へ通ってるのか。
さらにお茶を飲むかと聞いてくる。断るわけにもいかないのでうなずくと、付いてこいと手を引っ張る。彼女の家は知ってるが、入ったことはなかった。親も会ったことはない(と思う)。子供が学校帰りに旅行者を連れてきて、お茶をふるまえとなったら、実に面倒そうだ。気が引けるが、小1に連れられて、お家へ。
家に入ると若いお母さんとおばあちゃんが座っていて、お母さんは家のなかでも、きっちりとしたタイプのヒジャブを着けていた。とはいえ、ほかの人と変わることはなく、奥に隠れたりしないし、普通に話しかけてもくる。小1になった娘は、今のところ何も着けていないが、もう少し大きくなったらお母さんみたいにヒジャブを着けるようになるのだろうか。そんなことを思いながら、小1に早く色を塗るようにとせかされ、宿題のお絵かきを手伝わされるのであった。