人が旅に出る理由はなんだろうか。一言に旅といっても、いろんな旅があるので、人の数だけ答えがありそうだけれども、そこに共通点があるとすれば、日常生活で満たされないものを求めて旅をする、ということではないかと思う。それは刺激だったり、安らぎだったり、その人によって満たされるものはそれぞれあるだろう。
今度旅行へ行く予定とか、この前旅行に行ってきたという話をした相手から、「何目的ですか?」と聞かれることがある。旅の目的というと一般的に、観光地や名所、グルメ、ショッピング、絶景、リフレッシュ、秘境、自分探し、などがあるが、「人です」と、いつも即答だ。ただ、旅の目的が「人」と言っても、伝わりにくい。それに、きっと相手が何目的かを尋ねたのは、行き先がマイナーな国だったため、その国にどんなものがあるのかを聞きたかっただけであろうから、斜め上の回答が返ってきていることだろう。
でも、本当にそれが理由のすべてなのである。いろいろな旅をしていくうちに、だんだんと自分が本当に落ち着く場所や、満足するものがわかってきて、たどり着いたスタイル。旅行らしい旅行よりも、現地の人の暮らしぶりを見たり、無邪気な幼い子供たちと遊んだりしているほうが、心がふっと和み、優しさが充電される。それからしか得られない養分がある。行きたい場所は?と問われれば、人が親切なところ、そう答える。
そんなふうな説明すると、日常の人間関係のしがらみに疲れているのかとか、人間関係に悩んでいるのかなど、メンタルが病んでいる人なんじゃないかと心配をされてしまう。