何年か前からパキスタン政府は、海外インフルエンサーをつかっての観光PRに熱心に取り組んでおり、いかにパキスタンが魅力的で、ホスピタリティあふれていて、安全に旅行できる国かをアピールしている。
実際パキスタンは、さまざまな魅力があり、ホスピタリティあふれる国だと思うけれど、インフルエンサーの発信を鵜呑みにしてはいけない。まず、もっとも重要な点だが、インフルエンサーにはパキスタン政府がついていることを忘れてはならない。普通の旅行者ではないのだ。
インフルエンサーのSNSには、一般の観光客が立ち入ることができないエリアの写真も数多く見受けられる。パキスタンのそんなエリアには、まだまだ知られざる絶景がある、訪れる人がいないので、SNSなどにもほとんどアップされていないから、インパクトはすごい。だが、インフルエンサーと同じように旅しようとしたら、取り返しのつかないことになる可能性がある。インフルエンサーには政府がついているので、入域許可も簡単に出るし、なにより政府に守られているが、そうではないのだ。
パキスタンには、ガチで入ってはいけないところもある。政府の支配がおよばない部族勢力の影響下にある地域や、パキスタンからの独立や自治の拡大を目的とする反政府武装勢力がいる地域などは、入ったら生きて帰れる保証はない。
そんなガチヤバなところじゃなくても、旅行者の安全はまったく保証されない。日本人もよく訪れている街でいうと、パキスタン南部にあるパキスタン最大の都市カラチや、アフガニスタンへ通じる交通の要衝であるペシャワールも、いつなにが起こるかわからない。カラチは中国人や中国権益を標的としたテロや、身代金目的の誘拐がたびたび発生しているし、ペシャワールはパキスタン・タリバンによるテロや、治安部隊との銃撃戦なども起こっている。
インフルエンサーだけでなく、外国人観光客がほとんど入ったことのないエリアへのツアーを企画・実施する旅行会社もある。
インフルエンサーや旅行会社の写真だけ見れば、平和そうに見える。ただ、そういったマーケティングのなかには、事実と異なる情報が発信されている可能性があるということは、常に心にとどめておくべきである。