小一時間かかる村を訪れた帰り、ひとりで歩いていると、道沿いのクルミの木を収穫している家族と出会った。
斜面に生えているクルミの木を父親が棒で叩き、落ちた実を子供たちが集めている。クルミの木のある斜面の反対側は、崖地となっていて、数メートル下が畑となっている。つまり、父親が叩き落としたクルミの実が、ころころと転がって崖下に落ちないように拾わないといけない。せわしなく動く女の子がやたらと可愛い。父親が枝を叩くたびに、女の子が転がるクルミを追いかける。
なんだか初期のコンピューターゲームのようだ。そんなことを考えながら、その光景を眺めたり、足元に転がってきたクルミを拾ったりしていると、ふと記憶が脳裏に現れる。
ん!?これと同じことが数年前にもあったはず。過去に似たような体験をしたというより、まったく同じなくらいに、もっと近い感覚。
同じ村からの帰りで、今いる場所も同じ。可愛い子がいるなと思ったことも同じだし、その女の子もおそらく同じ子な気がする。ただ、前のときに写真を撮っていなかったので、たしかめるすべがない。でも、おばけじゃないはず。
不思議なことに、この日までそのことをすっかり忘れていたのだ。この日に再び出会わなければ、思い出さなかったかもしれない。