人物の写真を撮るうえで、もっとも大切にしたいと思っているのは、その人がその人らしく写っているかどうかいうことだ。
その「その人らしさ」ってのは、純粋な「その人らしさ」ではない。写真における「その人らしさ」というのは、被写体だけのものでなく、被写体と撮影者の間に生まれる空気感や関係性によって引き出されるものだからだ。自然体のありのままの姿を撮るということとは、一見似ているようだが、ちょっと方向が違う。
相手に興味を持って、相手の個性や魅力を洞察し、それを写真に収めようとする挑戦のようなものだ。こちらから見た相手らしさを、好意を持って、表現していく。写真というのは、撮影者の世界観や認識の提示であるが、一方的に価値観を押しつけるのではなく、こちらから見た相手らしさという偏見押しつけるのだ。プロデュースみたいなもんだ。
正解はないのだけど、相手が写真を見たときに、自分の魅力が引き出されたうえで、自分も知らない新しい自分がそこにいるような感覚になってくれれば、最高ってやつだろう。