カラーシャの谷の小学校は、カラーシャ族の学校、イスラム教徒の学校、そして共学の学校とに分かれている。そのためひとつひとつの学校の規模は大きくはない。基本は1学年1クラス。教師の数も限られており、ひとりの先生が2つの学年を掛け持ちで受け持つのが、この地のスタンダードだ。
なかには同じ教室に2学年をまとめている学校もあるが、多くの場合、先生は2つの教室を行ったり来たりしている。単純に計算すれば、授業の半分は先生のいない時間ということになる。その間、子供たちは黒板の文字を復唱したり、ノートに書き写したりして過ごす。
復唱の時間になると、ひとりの子が代表して黒板の前に出る。手にした棒で文字を追いながら音読すると、クラス全員がそれに続いて声を合わせる。ひとりが読み終えればまた次の子へ。そんな素朴なリレーが繰り返される。
もちろん、誰もがスラスラと読めるわけではない。なかには文字の前で戸惑い、言葉を詰まらせてしまう子もいる。そんなとき、先生がいればすぐに助け舟を出せるのだが、あいにく今は不在だ。
ある1年生のクラスに、小さな先生がいた。
音読する子の横にピタリと寄り添う女の子。音読する子が詰まったり間違えたりするたびに、的確に言葉を正してゆく。どうやら先生からその役割を任されているらしい。
パキスタンの小学校は、5歳の0年生から始まる。1年生といえば、まだ学校に通いはじめて2年目だ。それだというのに、小さな肩に責任感を宿した立派な先生なのであった。