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Myanmar2016

#49

陥落ミャンマー

Mar 30, 2017

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Photos

「あれ?ミャンマーってこんなんだったけ?」旅行開始から何日か経っても、ミャンマーにどこか馴染めない自分がいた。写真がちっとも撮れていないのだ。私はスローペースで、初日などはその国に馴染めず一枚も写真が撮れないことも多い。だが、三日間で撮ったのは、料理の写真一枚だけ。これは明らかにおかしい。ミャンマーは写真がめちゃくちゃ撮りやすい国というわけではないが、写真を断られることはほとんどないので、決して撮りにくい国ではなかった。その後もずるずると何が違うのか、決定的なものがいまいち見つからず、結局いつまで経ってもどこか馴染めないままであった。

私にとってのミャンマーの良さというと、こまかいところをあげれば、旅行者が少ないとか、ビールがうまいとか、物価が安いとか、いろいろあるが、やはりミャンマーらしさ、いわゆるオリジナリティーが残っていること。それと、なにより人がとても親切ということだ。ミャンマーが親切大国であるということについて、異論がある人はいないだろう。そんなミャンマーに惹かれた人は、私だけではないはずだ。
ミャンマーは私が海外ひとり旅をはじめてした国で、それ以来ずっと一番好きな国として君臨していた。ミャンマーに行くたび「もう海外旅行はここだけでいいんじゃないか」と、本当に毎回思っていたほどだ。
長く続いた軍事政権から民主化し、ミャンマーは変わってゆくことはわかっていたことではある。今までは経済制裁されていた影響で、ミャンマーには外資の企業もほとんどなく、旅行者も少なかった。それがミャンマーらしさを形成していたことは明白で、旅行者が増えたり、外国の企業や製品が入ってきて、街並みも様変わりするんだろうと、それはわかっていた。だけど、人はそう急激には変わらないだろうし、また変わって欲しくないという願いもあった。
その願いは叶わずといったところだ。とはいっても、別にミャンマー人が不親切になったわけではない。ただミャンマー人と触れ合う機会がぐんと減った。写真が撮れなくなったのも、撮りたいものが減ったのもあるが、分母が減ったのも大きい。
今までは外国人旅行者なんて数えるほどだった町でも、今ではわんさかあふれかえっている。旅行者が珍しかった時代は、ただ歩いていても、自転車に乗っていても、あちこちから挨拶された。レストランで食事をしたり、ビールを飲んでいたりすると決まって誰かが声を掛けてきた。毎日、毎日、何十回も声を掛けられるので疲れたりもしたが、それはそれで、おもしろかったりもした。
今や、旅行者が増えたことで声を掛けてくるのは、タクシーや物売りの客引きくらいだ。ミャンマー人だって、こんなにも増えた旅行者全員に話し掛けてられないだろう。レストランやホテルの人なんかもずいぶんとそっけなくなったように思う。数が多いと事務的になってしまうのは仕方ないのだろうが、変わっていってしまうミャンマー人に寂しさを覚えるばかりだ。
それにずいぶん商売熱心な人が増えた。決してお金を稼ぐことは悪いことではないが、二言目にお金の話をされると、やはりげんなりする。素朴だった村が大人から子供まで、お金儲けに躍起になっているのを見ると少し悲しくもなってくる。
好きだったものはなくなってしまい、新しくできたものには好きなものはない。以前のミャンマーが好きだった人にとっては、今のミャンマーも変わらず好きでい続けるってのは、少しむずかしいことのように思える。

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